東京高等裁判所 昭和48年(ラ)46号 決定 1973年3月10日
抗告人 新井浅治
主文
原決定を取消す。
本件競落を許さない。
理由
抗告人は、原決定を取消し、更に相当の裁判を求める旨申立て、その理由として述べるところは別紙のとおりである。
所論は要するに本件競売の入札及競落期日の公告が適法に行なわれなかったというにある。記録によれば、右公告は昭和四七年一二月一八日に原裁判所の掲示場に掲示され、同月二二日午後三時一〇分墨田区役所の掲示場に掲示されたほか、同月二六日付日本経済新聞に掲載されたことが認められるが、一方、抗告状添付の墨田区役所総務部総務課文書係主事近藤舜二作成にかかる「入札及競落期日公告の掲示について」と題する書面によれば、右のうち墨田区役所の掲示場における掲示は、他の事件の掲示公告物と重ね、その内側に掲示したため、当該公告物を外部から確認できない状態にあったことが認められる。してみると、このような公告の方法では、公告の目的を達することはできないから、このような公告は競売法二九条二項によって準用される民訴法六六一条に違反し、競売法三二条二項によって準用される民訴法六七二条第五に該るというべきである。よって本件抗告は理由があるので、原決定を取消し、本件競落を許さないこととしたうえ主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 中西彦二郎 裁判官 松永信和 小木曽競)
<以下省略>